サインを見落とさないための親のアンテナ

「能動的な聞き方」について、いろいろ書いてきましたが、

いつでもどこでも聞かなくちゃいけないの?というわけではありません。

 

 

聞くにも、タイミングがあります。

子どもがサインを出しているときでいいんです。

 

 

この場合のサインとは、子どもが、悩んだり、不安になったり、イヤだなという気持ち

を抱えたときにする行動のことです。

 

 

子どもを見て、

「いつもと様子が違うな」「何かあったのかな」「ちょっとへんだな」

と感じる行動のことです。

 

 

例えば、こんな事例があります。

 

いつもマンガしか読まない小学校4年生の子どもが、めずらしく部屋で本を読んでいま

す。お母さんはそれを見たとき、「やっとマンガから卒業した!」と思い、うれしくな

りました。

 

ところが、子どもの様子をよく見てみると、本を読んではいるけれど、夢中

になっているのではありません。それどころか、なんだかつまらなそうで、暗い顔をし

てただ本をじっと見ているだけでした。

 

母「その本、つまらないの?」

子「ううん、違うよ。」

母「本がつまらないわけじゃないのね。」

子「みんな、遊べないんだって。」

母「遊ぶ友達がいないから、つまらないのね。」

子「うん…公園に行ってみようっと。」

 

この場合、子どもが「つまらなそうに本を見ている」がサインです。親がサインをキャ

ッチできたからこそ、子どもは心の中のイヤなことを口に出すことができたのです。

さらに、公園に行くことを自分で考えたのです。

 

 

サインを見逃して、「本を読んでいて、えらいね」とほめていたら、子どもが考えたイ

ヤな気持ちは、蓋をされたままなのです。

 

 

このように、サインにはいろいろな種類があり、親がサインをキャッチすることが、子どもの心を理解することへとつながるのです。

 

 

このサインをキャッチできたときが、「聞く」タイミングです。「聞く」という対応を

とることで、子どもが抱えた悩みに子ども自身が向き合うことができて、自分で考える

子どもに育っていくのです。

 

 

サインを見落とさないために、親は日ごろから子どもの表情や態度、生活や体調など、

いろいろなことにアンテナを張っておくことが大切です。

日頃から、親のアンテナを磨いておきたいですね。

 

 

 

本間 恵

3歳の声変わり

今日も能動的な聞き方についてです。

 

 

「3歳の声変わり」って知っていますか?

大人に近づいた子どもの声が変わるのではないのです。

親の声が変わるのです。

 

 

生まれたばかりの赤ちゃんに、親はとても上手に能動的に聞いています。

 

 

赤ちゃんの泣き声が聞こえたら、おしっこかな、おなかがすいたのかな、抱っこかなと

その子の気持ちを考えて、おむつを替えながら、

 

「気持ちよかったね。」

「さあ、取り換えようね。」

「気持ちよくなったね。」

と声をかけたりしていませんか?

 

 

でも、子どもが言葉を話すようになってくると、転んで痛いと泣くわが子に、

「そんなことで泣かないのよ!」

と怖い顔で言うようになってはないでしょうか?

 

 

親の声変わりが始まっているのです。

 

 

もちろん、「子どもがかわいい」という親の気持ちは変わっていません。

ただ、「かわいい」から「甘やかしてはいけない」と思ってしまう方が、多いのです。

 

 

「しつけ」が始まるのもこの頃からです。

トイレット・トレーニング、ご飯の食べ方、お友達との遊び方…。

子どもができるようにしておかないと、「後でこの子が困ることになったら、かわいそ

う」と、親として一生懸命になるからこそ、声変わりをしていくのです。

 

 

椅子の上に登っていた、男の子が、転げ落ちて泣き出しました。

「ダメじゃないの!ケガをするから気をつけなさいって、言ったでしょ!」

とお母さんが言うと、

「転んで痛いのは僕なのに、なんでお母さんが怒るんだよ!」

とワ〜ンと泣きだしました。

 

 

子どもが親に心を閉じてしまう一歩が、こんなところで始まってしまうのです。

 

 

子どもが欲しいのは、「痛かったね。」という一言ではないでしょうか?

「しつけ」その後でもできるんです。

 

 

 

本間 恵

共感するということ

昨日は、親業訓練パート2講座の日でした。

受講生さんのお話で、こんなことがありました。

 

 

娘が困っていたことを能動的な聞き方で丁寧に聞いていったところ、

娘が「あ〜すっきりした!」と言ったのだそうです。

「ちゃんと聞くことができたようで、うれしかったです。」とお話をされていました。

 

 

これは前回のお話で、今回は失敗談をされていました。

 

 

同じように、娘さんが腹が立ったことを話してきたので、聞いていたのですが、他のこ

とをしながら目を合わさずに聞いていたところ、娘さんが言った一言が、

「今日は、すっきりしない!」

 

だったのだそうです。

 

 

それを聞いた受講生さんは、

「ああ、やっぱりちゃんと聞くには、手を止めて、身体を向けて、相手の目を見て聞か

なくちゃいけないんだな。それに、ちゃんと共感していなかったかも」

と実感されたのだそうです。

 

 

そこに気づけるようになった、受講生さんの成長が感じられるお話でした。

 

 

このお話のように、「聞く」というスキルを手にしただけでは、相手の手助けはできな

いのです。

 

 

「共感する」ということが大事なのですね。

相手の身になって、気持ちを味わうのです。

そして、相手を心から助けたい。

相手が自分で解決できると信じて聞くのです。

 

 

「難しいです〜」と思われるかもしれません。

私もそうでした。でも、くり返し実践していくと、少しずつ「あ!聞けてる!」という

感じがつかめてきます。

 

 

親業のもとの名前は、「Parent Effectiveness Training」です。

トレーニングをしていけば、だれでもこの方法を使えるようになるというものです。

 

 

さらに、この親業の本当の魅力は、スキルを手にするだけではないのです。

講座を受けていく中で、自分を見つめることができて、自分の生き方を見直すことがで

きるということなのです。

 

 

たくさんの受講生さんが、

「自分を見つめることができた。」

「自分が大切に思っていることが、はっきりした。」

「人と関わることが、楽になった。」

というような感想をおっしゃっています。

 

 

忙しく、なかなか自分と向き合う時間がとれない方が多くなっていると思います。

講座に参加することで、自分を大切にする時間を作っていただけたら願い、活動を続け

ています。

 

 

本間 恵

コミュニケーションの質

私は、朝ドラの「べっぴんさん」を録画しながら、みています。

 

先週は「届かぬ思い」

 

仕事に忙しい親の子ども達が、多感な思春期を迎えています。すれ違いが多く、子ども

はさみしさを抱え、居場所を求めています。

親は、子どもが大きくなってきたのだから、手を離しても大丈夫だろうと思い、仕事に

没頭していきます。

 

でも、親の子どもへの愛情は、ちゃんと伝わっていないのです。当然、子どもはわかっ

てもらえない不満を、反発してぶつけてきます。そんな中で、

 

「思いがすべて伝われば、誤解もすれちがいも勘違いも生まれません。伝えることは難

しい事なのです。」というナレーションの言葉がありました。

 

 

胸にぐっときました。

 

 

誤解やすれ違いや勘違いが生まれないように、思いがちゃんと伝わるように、伝える方

法が、ここにあるんですよと言いたかったです。

 

 

ドラマの中のことですが、今の親子関係でも同じことだと思います。

女性がもっと働ける社会を!と言われていますが、仕事もして、家事もして、子育ても

する。

 

 

大変な事だと思います。

子どもと過ごす時間が限られてしまうこともあるのではないでしょうか。

 

 

そんな中で、限られた時間を大切に、コミュニケーションの質を高めていきたいので

す。コミュニケーションの質を高めていく方法が、この親業にあるのです。

私は、親業をお伝えすることで、親の人生が楽になっていってくれればと願っていま

す。親が楽になるということは、ひいては、子ども達が笑顔になるということです。

 

 

私は、子ども達が大好きです。

子ども達が笑顔になってくれるためにも、親業を伝えていきたいと思います。

 

 

 

本間 恵

受験真っ只中のお母さんに伝えたいこと ~受動的な聞き方~

今日は、「受験真っ只中のお母さんに伝えたいこと」その2です

 

 

子どもが不安を抱えているときに使える、「能動的な聞き方」ということをご紹介しま

した。気持ちを共感して、受け止めて、言葉で返していく聞き方でした。

「聞く」という方法には、別の聞き方もあります。

 

 

それは、「受動的な聞き方」というものです。

・沈黙

・あいづち

・促し

の三つです。

 

 

沈黙は、黙って最後まで聞いていくことです。

黙って側にいるということも、沈黙の1つです。

 

 

あいづちは「そう」「そうなんだ」「それで」と聞いていきます。

皆さんも、多く使われていることと思います。

 

 

促しは、「心の扉を開く言葉」とも言って、相手が話をしやすくなるように、

促す聞き方です。

「何かあったの」「良かったら、話してみない」「どんな気持ちだったの」

などと聞いていきます。

 

 

この受動的な聞き方も、子どもが安心して心の内を話やすくなる効果があります。

 

 

例えば、子どもが黙っているとき。

そんなときにどうやって聞いたらいいの?と思われるかもしれません。

 

 

でも、ただそばにいて見守るということもできますね。

沈黙の1つです。

 

 

黙っているときも、子どもは何かしら考えているものです。

その、考えている時間を、尊重していきたいのです。

子どもも一人の人間です。悩み、考えながら、成長しているのです。

 

 

「聞く」ということで、子どもを尊重している親の気持ちが伝わるのですね。

そうすると子どもは、親から愛されていると感じるのです。

愛されている子どもは、自己肯定感が育ちます。

 

 

受験真っ只中のいまだからこそ、親の愛情がしっかりと伝わるチャンスなのです。

受験は、親にとっても大変な時ですね。その大変な時を、親子の信頼関係を強く深くし

ていく、チャンスに変えていきませんか?

 

 

それが、「聞く」ということで出来るのです。

 

受験真っ只中のお母さんに伝えたいこと ~能動的な聞き方~

今日は、「受験真っ只中のお母さんに伝えたいこと」です。



各校の試験がいよいよ始まりましたね。

子どもが受けることとはいえ、母もハラハラドキドキ、心配が尽きないと思います。



自分がわが子と変わることはできないので、やれることはできるだけやってあげたい

と、どなたも思っているのではないでしょうか。

体調管理から、精神的なサポートまで、お母さんの方も疲れてしまいそうですね。



そんなとき、お子さんにどんな風に接していますか?

不安な子を励ましたり、親としてアドバイスしたり、支えてあげたいですよね。



ただし、その言葉も、言い方とタイミングを考えて伝えないと、かえって子どものヤ

ル気スイッチを切ってしまうことになりかねないのです。



例えば、高校受験を数日後に控えた娘が、こんなことを言いました。



「あ〜ぁ、受験なんかどうでもいいや!もう入れれば、どこでもいいよ。」

こんな時、どんな言葉をかけますか?



例えば、

「何言ってんの!後もう少しなんだから、がんばりなさい!」

「そんな弱気じゃ、ダメでしょ!」

「○○高校に入りたいって、がんばってきたじゃない。 大丈夫よ。入れるわよ。」

「みんな不安なんだから、そんな時こそ、人よりも勉強することが大事なのよ。」

「まあ、気分転換に外でも走ってきたら?」

…等など、こんな言葉をかけたくなりませんか?



これらの親が言いがちな言葉を、「コミュニケーションをはばむお決まりの12の型」

とよんでいます。




言われた子どもは、どんな気持ちになるでしょうか?

「自分の気持ちをわかってもらえない…。」と、多くの子どもが思うのではないで

しょうか。



親は本当は、不安な子ども激励したくて、言っているのですよね。

 

愛情があるからこそ言っているのに、愛情がちゃんと伝わらないとしたら、本当に

もったいないと思います。



では、どんな接し方だと、子どもに愛情が伝わるのでしょうか。

それは、子どもの気持ちに共感して「聞く」ということです。



子「あ〜ぁ、受験なんかどうでもいいや!もうは入れれば、どこでもいいよ。」

  と言ったら、

親「そうか、受験勉強が辛いんだね。」

 「不安になって、勉強する気が起きないんだね。」

こんな聞き方です。



子どもの言葉だけでなく、声色・表情などからも気持ちが想像できます。



聞いた後に子どもから、こんな言葉が返ってくるかもしれません。

「うん、もうやっても無理だよ。」

「もう、めんどくさくなってきた。」

 

 

そうしたら、またその気持ちを聞いていきます。



「入れるか、不安でいっぱいなんだね。」

「つかれちゃって、ヤル気が出ないんだ。」



このやり取りを重ねていくと、子どもの気持ちが落ち着いてきます。

そうすると、どうしたいのかが見えてくるのです。

 

 

自分で考えるようになるのですね。

言われてやるよりも、自分で考えて決めた方が、子どもはヤル気になりやすいので

す。

 

こんなふうに、自分で考える手助けをする聞き方が、「能動的な聞き方」です。



この聞き方ですと、親が自分の気持ちを聞いてくれることで、自分のことを信頼して

いるのだということを、子どもは感じるのです。

 

そして、親自身も、子どもの気持ちをきくことで、心のゆとりが生まれてきます。

子どもの気持ちがわかると、少し様子を見てみようかなと思えるようになってきま

す。

 

親もハラハラ心配をすることが、減ってくるのですね。



受験前の不安定な時こそ、子どもの気持ちを聞いて受け止めていきたいですね。

不安でもなんでも、そのままを受け止められると、子どもは安心するものです。

子どもが安心し、親の愛情が伝わる接し方、試してみませんか?

介入的援助

今日は、4年生の子ども達についてお伝えします。

 

 

私は、1カ月に2回ほど学校に行っています。

新採の先生が、初任研でいなくなるので、代わりに1日教えます。

少ない時間ですが、子ども達と過ごす時間は、とても楽しい時間です。

 

 

子ども達が35人いれば、毎日いろいろなトラブルがあります。

そんなときに使えるのが、親業の方法です。

親業には、「聞く・話す・対立を解く」の三つの柱があります。

 

 

この三つの方法を手にしたおかげで、私は迷うことがほとんどなくなりました。

何かあっても、学んだ方法のどれかが取れるのです。

あきらめるということが無くなりました。

 

 

日常で、1番使うことが多いのは、「聞く」ということです。

 

 

例えば、昨日こんなことがありました。

 

じっとしていることが苦手なA君。

思ったことをついく口に出してしまったり、すぐに手や足を出すので、よくトラブルに

なります。周りの子も不満があるので、ちょっかいを出すことがあり、またトラブルに

なります。

 

音楽室に行く前に、B君がA君に「くず」と言いました。

そこで怒ったA君が、手を出してしまいもめました。

 

やり合っている二人をとめて、話を聞きました。

まだA君は気持ちが高ぶってます。

B君には、あとで話を聞くことを伝え、先に音楽室にみんなと行かせました。

教室では、A君が落ち着かない様子でウロウロしています。

 

ここでA君の気持ちを丁寧に聞いていきました。

 

A「もうBとは顔を合わせたくない!だから音楽にも行かない!」

私「顔を見るのもイヤなくらい、怒っているんだ。」

A「そうだ!Bなんて、いつもいつも俺が何もしていないのに、悪口を言ってくるんだ。」

私「何もしていないのに、悪口を言われるのが、イヤなんだね。」

A「1週間のうち、4日か5日は言ってくる!」

私「4日か5日も言われて、許せないんだ。」

A「もう、Bなんて、どっか行ってほしい。転校してほしい。」

私「B君と一緒にいるのは、イヤなんだね。」

 

…というように気持ちを聞いていくのです。

すると、A君はだんだん落ち着いてきました。

そこで、B君とあとで話を聞くことになりました。

 

 

今度は、私の気持ちを伝えました。

 

私「残りの時間、A君が教室にいて音楽の勉強ができなくなってしまうのは困るな。A君

  もちゃんと音楽の勉強をしてほしいんだよ。」

 「それに、A君が教室にいると先生は心配だから、仕事ができなくなっちゃうんだ 

  よ。残りの時間でこのノートを見て、返したいんだ。」

A しばらく考えていて、「おれは、ノートを配ったり、手伝いをするよ。」

私「音楽室には、行きたくないんだね。」

A「うん。Bの顔を見たくない。」

私「B君には会いたくないんだ。」

A「うん。」

私「先生は、A君に音楽の授業を受けてほしいと思っているんだよね。

  歌ったり、楽器を演奏しているときのA君は、すごく楽しそうに見えるから。」

A「・・・・。」

 

考えている様子。

ノートなどを全部配った後、みんなが教室に帰ってきた。すると、すっと教室を出て音

楽室に行った様子。音楽専科の先生に後で聞くと、音楽室にきたので少しだけ勉強した

とのことでした。

  

その後A君、B君一緒に、話を聞きました。

両方の言い分を交互に聞いていきます。

 

私が、二人の気持ちを言葉にして確認することで、聞いている相手にもその気持ちが伝

わります。そのやり取りを重ね、今後どうするかを決めて、最後はお互いに謝りまし

た。私の気持ちも、ちゃんと伝えました。

 

「イヤなことがあっても、手を出さずに、言葉にして伝えられるようになってほしいこ

と。気持ちを出し合って、仲良くしていってほしいこと。今日は、仲直りができて、う

れしかったよ。」です。

 

 

このやり取りは、聞くと話すを駆使していくものです。

 

 

利点は、

・教師が裁判官になる必要がないということです。

・子どもは気持ちを受け止めてもらえるので、気持ちが落ち着いてきます。

 ですので、どうしたらいいのか、自分で考えられるようになります。

・相手の気持ちを理解することができます。

・教師に無理やりいうことをきかされたという、不満を感じることがなくなります。

・教師に対して、信頼感を持つようになります。

・教師は、子どもが相手のことも考えられることを知り、子どもを信頼できるようにな

 ります。

 

 

こんな日々のやり取りを積み重ねていくことで、お互いの信頼感が深く・強くなってい

くのです。そして、子どもが自分で考える子どもに育っていくのです。

 

 

この対立している両者の言い分を聞いていくことを、親業では「介入的援助」と呼んで

います。介入的援助は、学校では毎日使っています。

効果を実感しています。

 

 

これは、家庭であれば兄弟げんかなど、様々な場面で使えます。

この方法を知っていると、「自分が何とかしてあげなくちゃ!」と気負うことがなくな

り、楽になります。

 

 

先生方に、お伝えできたらなあと思います。

 

 

 

本間 恵